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鈴木 理 Makoto Suzuki
建築

 
機能的で実用的、そして本質的。
軽やかで北海道らしいタイムレスな建築を。

 ここ「ときわの家」を拠点としたのは2015年のことで、自宅兼アトリエとしてスタッフも一緒に働いています。ミズナラの大木とイタヤカエデ、サクラ、ホオノキが作業スペースから眺められ、アトリエと自宅の雰囲気を気に入って発注してくださる方もいます。個人住宅以外に携わった建築は、岩見沢の「NORTH FARM STOCK」や上川の「大雪 森のガーデン」、「札幌大通地下ギャラリー 500m美術館」の設計、「札幌三井JPビルディング」の外装デザイン監修などがあります。近所にある、テキスタイルデザイナー梶原加奈子さんのアトリエ兼ショップ、レストラン、ゲストハウス「COQ(こきゅう)」の設計も担当しました。

ときわの家 (写真:酒井 広司)

 私はもともと車が好きで、カーデザインやエンジニアリングに興味を持っていました。大学在学中に、機能性とともに文化的なデザインを追求することができる建築設計に魅力を感じ、この道を選びました。父が建設会社で一級建築士として働いていたので、幼少期から建築の図面などが身近にある環境でした。母は洋服を作る人で、知り合いに頼まれると採寸して仕立てていました。いわゆるテーラーメイドですね。私は職業を父から、仕事の進め方を母から受け継いだように思います。

 設計をするときには機能的で実用的であること、そして本質的で時代に流されないことを大切に考えており、時間が経っても良いと思えるものをつくりたいです。建物を新しく建てるときには、いかに周りの環境に調和するかということを重視しています。景色が良い場所に建てるなら、その場所の良さを損なわないように配慮して設計したい。ロケーションがあまり良くないなら、そこに建物が建つことで全体の雰囲気を良くしてくれるように建てたい。その場所の良さをどのようなエッセンスとして取り入れるのかが重要です。そして完成したその時だけではなく、数十年経っても良いなと思えるような建物であってほしい。設計するときにはその場所をよく観察して、時間が経っても変わらない良さを味方につけてデザインしていきます。

ときわの家

 自分が良いと思う設計を追求すると同時に、北海道らしさも大切にしたいと考えています。北海道では気候の問題から、繊細で華奢な雰囲気の建築設計は向きません。例えば、防寒や耐久性のために壁に厚みを持たせることが多く、細く薄くすることが難しいわけです。私はある程度ごつくなっても、野暮ったくはならないデザインを意識しています。包み込まれるような安心感があることは北海道建築の特長のひとつだと思いますが、毎日を快適に過ごすという条件は満たしながらも、見た目に重々しくはならず、ある種の軽やかさが感じられる空間を目指しています。

ときわの家 (撮影:佐々木 育弥)

 前の世代の先輩たちがトライ&エラーを繰り返しながら、雪や寒さと暮らすうえでの耐久性や暖かさを備えた建築を模索してくれました。そうして基本的な快適さが担保された環境で、私たち
の世代はより表現に注力できていると考えています。制約がある中でどのような表現ができるか、次の世代に向けてアップデートしたいです。エネルギーのロスをできる限り少なくすることも課題ですね。自分が良いと思う感覚をブラッシュアップしながら、今後も北海道らしさが感じられるような建築設計を続けていきたいです。

札幌三井JPビルディング (撮影:酒井 広司)

自然が磨いてくれるセンサー。
豊かな気づきをくれる場所。

 「ときわの家」ができてから毎年、札幌市立大学デザイン学部の山田良先生が学生20名ほどを引率し、授業の一環として見学に来てくれています。建築は実際に見ていただくのが良いので、若い世代に何か感じてもらえるものがあればうれしいです。今後もこのような機会を積極的に設けていきたいと考えています。

NORTH FARM STOCK (撮影:酒井 広司)

 南区は自然が身近でありながら、中心部へのアクセスも良いので都市生活のメリットも享受できる場所です。私がここに移ってきたばかりのころ、窓から見える景色は「ただの森」でした。ところがずっと傍で過ごしていると見え方が変わってきます。西陽を遮る木々、新緑の輝きなど、森の豊かな表情がだんだんと見えてきました。風の吹きかたが違う。鳥の声が聞こえる。四季の移ろいだけでなく、日々の森が豊かに見えるんです。まるでセンサーのようなものが磨かれているように、この環境が自身の感受性や気づきを豊かにしてくれていると感じます。とても良い場所です。(談)

札幌大通地下ギャラリー 500m美術館(撮影:酒井 広司)

〈経歴〉
1968年札幌市生まれ
1994年北海道大学大学院 工学研究科建築工学専攻修了
株式会社アーキテクトファイブ
2003年一級建築士事務所 鈴木理アトリエ 開設
2007年株式会社鈴木理アトリエ一級建築士事務所に法人化
代表取締役
〈所属〉
2004~2009年
2014年~
東海大学デザイン文化学科 非常勤講師(建築設計)
2006~2015年北海道科学大学建築学科 非常勤講師(建築設計)
日本建築家協会会員/日本建築学会会員
〈主な受賞歴〉 
2010年第6回帯広市まちづくりデザイン賞 「十勝トテッポ工房」
2011年第24回北海道赤レンガ建築奨励賞 「十勝トテッポ工房」
2012年グッドデザイン賞 「500m美術館」
2015年グッドデザイン賞 「札幌三井JPビルディング」
2016年第1回JIA北海道建築大賞 大賞 「ときわの家」
第41回北海道建築奨励賞 「ときわの家」
日本建築家協会優秀建築100選 「ときわの家」
2022年第5回北海鋼機デザインアワード 優秀賞
「PREMIUM SHOP HUSQVARNA SAPPORO」



株式会社鈴木理アトリエ

札幌市南区常盤5条1丁目1-12

TEL 011-213-1381

E-mail suzuki@suzuki-ma.com

https://www.suzuki-ma.com

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