Pick Up Artist
前澤 良彰 Yoshiaki Maezawa
写真

 
白と黒のグラデーションが美しく、
見る人の想像力を刺激するモノクロ写真。

 子どものころから表現をすることが好きで、表現活動に関わりたい気持ちはずっとありました。高校卒業後、短期間でしたが大阪の写真専門学校に通ってからは、写真を続けたいと思い、他の仕事を始めた後もずっとストリートスナップを撮り続けていました。

 何を撮るのか、どんなテーマにするかは決めないで、思いついたこと、良いと思った場所を撮影しています。いつもカメラと共にあり、気になると撮るという感じでしょうか。撮影対象の共通点はあるのかもしれませんが、むしろ作品を見てくれた人の方が、私自身が意識していない意図に気づいてくれているのかもしれません。

※1

 モノクロという手法を選んでいるのは、白と黒のグラデーションが美しいことと、カラーで表現するより見る人の想像力を刺激すると感じるからです。以前、「アクアライン」という水をテーマにした展覧会に、千歳で撮影した水たまりの写真(※1)を出品しました。恐らくモノクロという手法の妙もあって、水たまりとは思えない風景の広がりというか、不思議な雰囲気を感じさせる作品になったと思います。これは、以前展覧会のポスターに使っていただいて多くの人の目に触れたことで、私にたくさんの出会いをもたらしてくれた記憶に残る作品の一つです。その展覧会は、支笏湖を撮った作品だけにスポットライトを当て、標本箱のような額縁に入った写真(※2)が浮き上がるように展示していただいたことが印象に残っています。写真だけにライトを当てることで、そこに閉じ込められた時間や空間が感じられる展示になったと思います。不思議なことに、写真の中の景色が動いたと感じるなど、今までにない体験もありました。

※2

 写真の魅力は、自分の手で描くのではなく、機械を通して写し取るところにあると思っています。機械を通すことで表現できることが広がる、と言ったらいいでしょうか。特にカメラがデジタルに変わってからは、それを強く感じるようになりました。大丸札幌店のきのとやカフェに展示していた上川町の銀河の滝(※3)は、カメラという機械を使うからこその手法を使って、細部まですべて見えるような作品に仕上げました。これはステッチ技法といって、一つの景色を何十カットにも分割して撮影し、それを後からデジタルでつなぎ合わせる手法で撮影しています。細かい水しぶきや小さな石ころまでが子細に映し出されて、迫力のある写真になったと思います。

※3

 最近は、その真逆でピンホールカメラを使って、写り込み過ぎない作品を撮影し始めました。ピンホールカメラに興味を持ったのは、20年ほど前に坂東史樹さんの図録撮影をさせてもらったことがきっかけです。作品の魅力に惹かれていつか坂東さんと制作をご一緒できたら、と思っていたのですが、2022年9月に機会を得ることができました。坂東さんに私の夢を模型で再現してもらい、ピンホールカメラで撮影した幻想的な写真(※4)は、とても気に入っています。このカメラはレンズもシャッターもなく、小さな穴を通った光で像をフィルムに焼き付けるので、露出に時間がかかります。そのために早く動いているものは映らないという特徴があります。そのような写りすぎないところなどが面白いし、魅力的だと感じています。

※4

住み続けて35年。住みやすさと
ポテンシャルの高さが南区の魅力。

 私の出身地は京都ですが、北海道は高校生の時からずっと憧れの土地でした。日本の農村を描いたテレビのドキュメンタリー番組「明るい農村」が好きで、そこに映し出された北海道の牧場の景色に感動して、「いつか北海道に」という気持ちを強く持っていました。

 就職して2年目くらい、20歳のときに一念発起して北海道へ。そして、南区に移り住んで35年になりました。本当に住みやすい街でとても気に入っています。地下鉄の駅があって街中までの利便性も悪くないですし、自然が豊かなところも良いですね。真駒内公園も良いですし、真駒内駅裏の桜山は散策もできて好きな場所の一つです。そして広くてポテンシャルを感じます。定山渓の魅力にも、もっと多くの人が気付いてくれたらと思います。

 最近は、再開発が決まった地下鉄真駒内駅周辺をピンホールカメラで撮影し始めました。激変するであろう駅周辺の街並みを、単なる記録としてではなく、作品として残していけたらと考えているところです。(談)

1960年京都市生まれ 札幌市在住
〈主な個展〉
1982年(SYASHIN-SOUCHI Vol.1)ギャラリーユリイカ 札幌
1983年(SYASHIN-SOUCHI Vol.2)ギャラリータピオ 札幌
1984年(SYASHIN-SOUCHI Vol.3)ギャラリータピオ 札幌
(SYASHIN-SOUCHI Vol.4)4丁目プラザ 札幌
1985年(SYASHIN-SOUCHI Vol.5)ギャラリータピオ 札幌
2000年(熱い日の記録)アートスペース201 札幌
2008年アートクロス クロスホテル札幌 札幌
2010年「街に風が吹くとき」コンチネンタルギャラリー 札幌
2011年「街に風が吹くとき」 Vol.2 ギャラリー 創 札幌
2019年(Syashin Souchi 『境界』 Vol.6)ギャラリーミヤシタ 札幌
2020年(前澤良彰 個展) presented by Kiyoe Gallery Niseko杏ダイニング ニセコ
(Something else)個展 ギャラリー創 札幌
〈主なグループ展〉
1986年存在派展(’95年まで毎年出品) 札幌
1990年まなざしの力展(アートスペース201) 札幌
1992年ノースユニット京都展(ヴォイスギャラリー) 京都
1993年写真的表層展(ギャラリーT) 札幌
2006~2011年New Point Vol.4~Vol.9(大同ギャラリー) 札幌
2009年アートクロス(クロスホテル札幌) 札幌
2010年100 CREATORS EXHIBITION in SAPPORO2010(ギャラリーレタラ) 札幌
2011年「記憶の循環」(苫小牧市立樽前小学校) 苫小牧
2012年500m美術館オープニング記念展後期展(札幌大通地下ギャラリー 500m美術館) 札幌
メディアアーツ・サマー・フェスティバル2012(インタークロス・クリエイティブ・センター) 札幌
2013年札幌美術展「アクア-ライン」(札幌芸術の森美術館) 札幌
2022年(The Forest) -みえるもの・みえざるもの- Tramnist Gallery 札幌
(maezawa’s primordial landscape)2人展 ギャラリー創 札幌
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